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真っ赤な花筏 [花風景]

花筏(ハナイカダ)には二つの意味がある。

一つは、モチノキ目の落葉灌木の固有名詞であり、も一つは川面に散った無数のサクラの花弁が、お互いに連なったまま流れてゆくさまを表現した、普通名詞である。
個有名詞は、春、葉の中心に小さな花を咲かせ、夏、3個の黒い実を実らせる、摩訶不思議な植物である。

今回ご紹介するのは、そのどちらでもない。いわばnikkinの造語であるが、画像をご検証いただければ、誰もが納得できる命名であることを疑わない。

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1. ベニサラサドウダンの花。
ドウダンツツジは真っ白の花。サラサドウダンは薄いピンク色。ベニサラサドウダンは真っ赤である。日光地区には天然のベニサラサドウダンがとても多い。

今はほとんど散って残っているのはわずかであるが、この時期が、真っ赤な花筏を鑑賞するには最適な頃なのである。湖水の西向きの岸辺でこの木を探そう。

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2. スズランに似た花が無数に落ちているが、陸地に落ちたのでは筏になることはできない。

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3. 水の上であるが、苔蒸した岩を飾る程度で、花筏にはなっていない。


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4. こんなにたくさん散って、この上なく美しいのだが、まだ花筏ではない。
花筏になれるような修行を積んでいないのだ。


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5. 水面を漂う小さなグループの花たち。花筏の幼少期か?
彼らが風に吹かれて岸に打ち寄せられ、そこで大きなグループとなって、初めて花筏と呼ばれる姿になる。

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6. 菖蒲の葉を彩る花筏。離れて観察すると、さながら菖蒲の花盛りである。

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7. 少し引き寄せると、菖蒲の茎と密接していないグループも多い。
よるべないさすらいの孤児たちを、暖かくかくまってくれる菖蒲は、大恩人なのである。「あったかいスープでも召し上がれ」

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8. 力強い幹が花たちに手を差し伸べている。
幹たちの大多数は鏡像にすぎないのだが、実像のごとくに見える。真っ赤ないかだたちは、身も心も寄せているのである。

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9. 背景の緑色の鏡像が暖かみを添えている。
ちょっと目には、枝々に咲いた赤い花々にしか見えない。
実際には花筏たちは、すべて同一平面上にしか存在しないのである。

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10. 水に浮くすべての小物達にすり寄って手を差し伸べる。筏も葉も、お互いに寂しいはぐれ孤児なのである。

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11. まさに筏である。1個1個は小さな花であるが、数十個集まって強く安全な筏となる。個々の花は、お猪口を浮かべたように、天に向かって口をあけているものが9割近くを占めている。筏の周りには微妙な波が生じて、光を反射しているので、あたかも城壁があるかのようにも見える。

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12. 枯れ枝に咲いた赤い花であるといわれても信じてしまう。枝と水面の接点にのみ咲く花である。この花を見ずして結構というなかれ。

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13. 明るい空の鏡像の中で、丸い岩が浮いているような錯覚が生じている。
そして真っ赤な筏たちが、球体を取り巻くアカネ雲に見える。宇宙の果てには、こんな現実があるのかもしれない。

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14. 反射を消しているので、水面が暗くなり、赤と緑と黒の3色が妖しい雰囲気を醸し出す。いまにも、
湯の湖の精が「オッス」と顔を出しそうな…。

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15.これまた妖しげな色彩の世界。いかなる状況なのか、少し考えてもらいたい。
おわかりだろうか。青みを帯びた細長い三角形の頂点だけが水面上に出ていて、岩の99%が水面下なのである。赤い筏がいい仕事をしている。

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16. ここにも赤、緑、黒の不思議な調和の世界がある。
ここで半日を過ごしたい。「静けさやトリコロールの隠れ部屋」

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17. 骨を連想させる枯れ枝の白がいい。
人文字ならぬ花文字は、ツツジの世界の文字かもしれない。ツツジの文化圏に足を踏み入れたのだろうか。浦島太郎も未経験の世界だ。

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18. トリコロールも他の色が混在すると、雰囲気が一変する。
中央上方、筏が空に向かって立ち上がっている。

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19. もう一度、赤花の菖蒲を見ながら、お別れとしよう。
長い夢から覚めた心地で、ありがとう、さようなら。

10年ほど前にこの花筏を撮る機会があった。
その後毎年、もう一度会いたい、もう一度だけでいいから遭いたい。それで死んでもかまわないからと願いつつ、夢はかなわなかった。
10年後に再会できた恋人は、以前とまったく変わらない、美しい頬笑みを向けてくれた。もう死んでも悔いは無い…?





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