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珍説論文[けあらし] [気象現象]

はじめに
 「毛嵐」「気嵐」あるいは「化嵐」「気怪し」などと書くこともあるらしいが、どれが正解なのか誰も知らない。「けあらし」と仮名書きするのが無難なようだ。

 Web検索では、「北海道留萌地区の方言。暖かい海流の表面に、山地で冷やされた寒気が流れ込むとき、その温度差が原因で出る霧の一種」とある。方言だと言うならば標準語では何と言うのか、調べても出てこない。そもそも存在しないのだ。
 気象用語は「蒸気霧」と言うそうであるが、まるでなじまない。「けあらし」が全国区になりかけているせいでもある。蒸気霧とは、英語のsteam fogを直訳しただけのものであろう。
文字を理解しても意味が分かりにくい。なじまないのも致し方ない。

 カメラマンや気象関係者
ならば、「けあらしと呼ばれる現象に2~3種類あるのではないだろうか」と感じた人たちが私をふくめて少なからず居た、あるいは居るはずである。そんな疑問を、画像中心に追及して見た。
 
日光地区で風景写真を撮り始めて10数年、撮り貯めたけあらしの画像は2千枚を超える。それらを丹念に読み解いて見つけた事実あるいはもう一つの真実がある。やぶにらみの科学者が畑違いの分野から、珍妙な理論で、珍説論文にまとめてみた。

1. けあらしの分類
  ① けあらし
    留萌など、東北・北海道地区で見られる典型的なけあらしである。
  通常1日で一番気温の下がる日の出前に出現し、日の出後に気温が上がると消え去る。日の出の太陽が雲の影に居る時は長く持続する。

   28,10 30 けあらしと釣り人1-3e.jpg
   ↑
 
 昨年10月30日10時ころ、中禅寺湖歌が浜からの撮影である。折からのワカサギ釣りが人気で、3~40艘のボートがが繰り出しており、幻想的な光景となった。
 朝から曇天気味の天候で、気温は氷点下一桁の前半だったと記憶する。

 中禅寺湖は最深部が160mもあり、対流が起こる。湧水成分が多く、湧水の温度は14~5℃とされている。対流で持ち上げられる水の温度は、7~8℃であろうか。気温との温度差は10℃前後。
  この画像のけあらしは、理論的には日の出前に出現したはずである。撮影開始後1時間ほどで消え始めた。
 
 ② 逆けあらし(仮称)
  日の出直後、強烈な赤外線が水面に届いた時に出現する。 
  水温が低く、気温が高い状況は、①の状況とは正反対である。
「逆けあらし」はnikkinの命名。
  通常、日の出直後が最強の輝きで、20~30分後に消え細る。
  ①タイプと比べると濃度が低く、逆光ではかなりの輝きでも、順光で見ると、弱弱しい、消え入りそうな風情に変化している。
  典型的な例は、早朝の釧路湿原で愛のダンスを舞うタンチョウの背景のピンク色である。

   24,3,1 1本ケヤキの日の出3-7e.jpg
   ↑
  平成24年3月1日、大谷川河川敷公園内の小さな池である。深夜に降った雪が池の中で溶けて水温を下げ、朝日が気温を上げたことにより、逆温度差が大きくなっているが、それがけあらしの発生機序か否かは不明。
  温度差以外で起こる変化としては、暖められた空気が乾いて軽くなり、上昇気流を引き起こすことなどもあるが、その影響も不明である。
  これに似た状況の画像はweb上に多数みられるが、すべて単に「けあらし」とされており、メカニズムについては全く触れられていない。

 ③ 瞬時に交代するけあらし
  日の出前の寒さで、すでに通常のけあらしが存在する状況の時に、日の出が強烈な赤外線を水面に届けると、けあらしは瞬時のあいだに①から②に交代する。この際、水温はほとんど変わらないと考えられるので、空気温だけが急速に上昇するはずである。 そのせいで通常のけあらしは容易に消え去るが、逆けあらしが登場するメカニズムが何とも不可思議である。  
      23,10,8 小田代湖のけあらし 4-4e.jpg 

  平成23年10月8日 06:27 小田代湖の水面からは①タイプのけあらしがさかんに立ち上っていた。中央の高い木は貴婦人と呼ばれているシラカンバである。。

23,10,8 小田代湖のけあらし 4-6e.jpg

 06:29  2分後、男体山の陰から朝日が顔を出した時には、けあらしは消え去る寸前となっていた。


23,10,8 小田代湖のけあらし 4-7e.jpg

 06:31 2分後には②タイプのけあらしが出現し、逆光の中で輝き始めた。

23,10,8 小田代湖のけあらし 5-2e.jpg

 06:34 その3分後にはこんなに発達した②タイプを認めた。
 このような①から②への交代を詳細にカメラで捕えられるチャンスは少ない。

 ④ 並立するけあらし
  地形によっては、①と②の両タイプの並立を観察できる。

   27,10,10 千手ヶ浜の貴重なけあらしe.jpg
   ↑
  平成27年10月10日 06:00 中禅寺湖千手ヶ浜の日の出。
左方の山は男体山。日の出前から存在していた①タイプのけあらしが、日差しの届かない山陰に限局して残っている。ギラギラした日差しに照らされた右方の湖面には、②タイプのけあらしが大きな顔で立ち上っている。
  カメラがあと10分早く到着していたら、①から②への交代を記録できたのだろうが、早朝バスの時刻表には逆らえない。
 対流による暖かな水を必要とする①タイプは水深を確保するために沖の方に位置取りし、浅瀬でも構わない②タイプは、カメラの足元近くまで来ている。①タイプがある程度しっかりした輪郭を維持しているのに対して、②タイプは輪郭がはっきりしない。
 先に消えるのはもちろん①であり、②は衰えながらも、30分近くがんばっている。

  
 ⑤ 滝壺けあらし
  滝壺にも①タイプのけあらしが発生するが、滝壺には特殊な事情がある。滝の流れがあい接する空気を大量に滝壺に引きずり込むので、溜まった空気が空に逃れ出て、滝壺から強い上昇気流が発生する。発生したばかりのけあらしはその場に留まることができず上昇気流に乗る。上昇したけあらしは、高く昇れば昇るほど冷気に冷やされて、白色が鮮やかになり、稀有なる美景を創り出すのである。
   
    23,10,19 湯滝の紅葉とけあらし5-4e.jpg

 平成23年10月8日 06:24 湯滝の上から滝壺方面を見降ろしている。背景は紅葉最盛期を迎えようとしている西戦場ヶ原。滝壺は下方に外れている。
 滝壺から昇って来たほぼ透明な空気柱が、途中から白さを獲得し、背景の紅葉とマッチして美しさを競い合う。このけあらしは、上昇気流とともに右に揺れ左に揺れ、途絶えたり、迂回したりを繰り返しながら、だんだん弱まってゆく。
 この白いけあらしが朝日に照らされながらも消えないのは、発生現場が低い場所にあり朝日が届かないため、生産が止まらないからである。
 地形の特殊性が影響するが、滝壺けあらしはどの滝にも発生するとは限らない。なぜか華厳の滝には稀にしか発生しないが、湯滝には頻繁に発生する。
 紅葉期の寒い朝はこの光景を懐かしく思い出す。

23,11,10 湯滝のけあらし1-7e.jpg

  平成22年9月14日 05:22 日の出のずいぶん前からけあらしが出たり消えたりしていた。力強く上るけあらしは、その日1日に使用しきれないほどのエネルギーを補給してくれる。
  気温についてはっきりした記憶がないが、これが出現する朝はとにかく寒い。

2. 考察
  けあらしの分類として5種類も列挙したが、基本的には①と②の2種類である。
  ③④⑤は出現の仕方による分類でしかない。
  nikkinが意図したものは、けあらしは①だけではないぞということと、②を①と同一視してはいけないんじゃない、と言うことの2点である。
 
  けあらしを分類しようなどと言う試みを思いつくのは、かなりのへそ曲がりかもしれない。しかし、まんざら的外れでも無いことをご理解いただけただろうか。少なくとも、①と②とを区別した方がすっきりする、と言うことにはご賛同いただけると思う。

20,11,29 湯気の中のヤチボウズ5e.jpg
↑  
最初に気になったのはこの画像だった。
  平成20年11月29日 画面奥の男体山頂上からでた太陽は、通常の日の出より1時間近くも遅れていた。それでも、太陽が顔を出しただけで光徳沼には湯気が立ちこもり、ヤチボウズたちが露天風呂を楽しんでいるような、幸せな時間を満喫しているような雰囲気になった。日の出前は寒々とした沼にすぎなかったのだが、衝撃的なドラマの展開に、ただただ見惚れてばかりいた。
  ここの水はほぼ100%湧水である。したがって水温は14~15℃。もしけあらしが出来るとすればそれは①タイプでなければならない。しかし、なぜかこの場所で、①タイプのけあらしは見たことがない。
  その後も、状況的にこの画像と似た条件で起こる湯気をたくさん見続けるうちに、タイプの異なるけあらしではないか、という想いがどんどん強くなっていった。
  ただし、納得できないことがある。
  ①タイプのけあらしは、みそ汁の椀から立ち上る湯気や露天風呂の湯気などのように、実生活でよく見かける現象の寒冷地版であり、不思議さを感じることはない。
  ところが、水温が低くて空気温が高い状況で湯気が立つ現象を、実生活で見かけた記憶がない。冷たい水の表面に熱源を近づけたら湯気が立つのだろうか。これは実験する価値がありそうだ。
  
洗面器に水道水を満たして白熱電球を極近まで近づけて20分間待ったが、湯気のユの字も現れなかった。洗面器の水温も高くならなかった。厳しい現実だ。
  それでも現実にはこのような状況でけあらしが立っているのである。温度差に起因するものでなければ、赤外線、遠赤外線、上昇気流なども捜査線上に浮かんでは来るが、かなり弱い存在であることも事実である。
  こんな中途半端な終わり方で、科学論文でございます、とはとても言えないが、静かそうな外見の池の水に、小石を1個投げ入れてみた次第である。

3. まとめ
  「けあらし」と言う現象を分類・解説し、それぞれに名前を付けてみた。
  従来のけあらしについては発生メカニズムがはっきりとしているが、今回の分類のうち、「逆けあらし」には、納得できるメカニズムを提唱出来なかった。
  権威者によるご批判、ご解説とご教示を切に願う次第である。







 




 

 
 


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コメント 2

joyclimb

①と②の分類、参考になりました。
今後、①と②の分類に注目して、けあらしを見たいと思います。
by joyclimb (2017-02-23 22:54) 

okko

滝のけあらしが凄いですね~。魅力あります。
by okko (2017-02-27 11:26) 

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