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美しき赤鬼 [紅葉]

日光杉並木公園の一角、重連水車に隣接して、1本の大きなモミジの木がある。ここ数年、その木を集中的に追いかけた私は、昇る朝日を受けて赤く輝くその木の姿に、赤鬼のイメージを重ねている。

この赤鬼は小さな水路に面して立っている。水面に作られる鏡像は、信じられない迫力でカメラマンを威圧し、カメラマンは恐れおののきながらシャッターに釘づけになる。

この大きな木が一斉に落葉する時、流れが弱い年には、
大量の落ち葉がその重さで水底に堆積し、流れをせき止めるほどになる。水は遠慮しながら、落ち葉の小山を迂回して、鬼と目を合わせることも無く逃げてゆく。
今年は残念ながら流れが勝ってしまって面白みがなかったのだが、昨年は落ち葉軍の圧勝に終わった。その画像を再掲する。


この赤鬼をシーズンの初めから終わりまで継続して撮影すると、栄枯盛衰の物語となる。天をも威圧する体格と赤さを誇る最盛期と、痩せさらばえて人目を避けるような衰退期との比較は、この世の無常を思い知らせる。

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1. 11月5日。すでに1週間近く前から紅葉を始めており、葉の7割近くが紅葉期に達している。中心部の一点に、もっとも明るい赤色の熾(お)き火が灯っている。

水車には「水車故障」の張り紙が張られている。そう、この水車はもう3年も動いていない。
この水車のための水路が赤鬼の左下を流れているのである。

28,11,05 1本のモミジの木2-9b.jpg
2. 他のアングルで撮ると、モミジの気性の荒々しさが読み取れる。

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3. 木の幹に寄り添って立つと、赤鬼のイメージが強くなる。
少しうつ気味の鬼かもしれない。
黒く見える葉っぱの塊はまだ緑色で、光の透過性が低い。

28.11.07 1本のモミジの木2-3'b.jpg
4. 11月7日。青空を背景にして撮る。
肉眼では気付きにくいが、紅葉の集団が球形に近い形で散在している。

28.11.07 1本のモミジの木1-1b.jpg
5. ほぼ最盛期に近い紅葉である。
朝日が左側から当たるので、右側に緑色の葉の集団が見える。
赤鬼は泰然自若。「俺様の目の黒い間は、ここら一帯は俺が仕切る。誰一人も悶着を起こさせない」

28,11,08 一本のモミジの木2-8b.jpg
6. 11月8日。ほぼ最盛期の赤鬼のイメージを確認していただこう。
木全体が火を吐いているかのようだ。「俺様」に逆らえる人なぞ誰も居ない。

28,11,09 一本のモミジの木1-5b.jpg
7. 11月9日。流れに映る紅葉である。水の中で火が燃えている感じさえする。
水中で待ち伏せして、獲物に襲い掛からんとする赤い妖怪そのものである。

28,11,09 一本のモミジの木2-1b.jpg
8. 逆方向の橋(下図に見えている)から撮影した。赤鬼のほぼ全容が映っているが、カメラアングルが180度違うせいか、前画像ほどの恐ろしさはない。。
上方に垂れている一枝は、もちろん赤鬼の手である。

28,11,12 1本のモミジ1-7''b.jpg
9. 11月12日。葉が落ちて光が奥まで届くので、鏡像がおどろおどろしくなった。
闇の帝王のようにも見えるが、意外と気の優しい赤鬼で、水から飛びだして人を怖がらせることはしない。
それにしても、こんな光景を誰も気づかずに通り過ぎるのが信じられない。

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10. 11月13日。葉が落ちるに従って、鏡像の威圧感も減じてくる。
寂しがりの赤鬼の始まりでもある。

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11. 11月16日。両岸に積もる落ち葉の量が増えるが、川の流れが強く、流れに落ちた葉はすべて流されてしまった。
赤鬼の鏡像は、もはや怖くも、気味悪くも無い。光が枝々の奥まで届くので、暗い影の部分が出来なくなるせいである。

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12. 葉が落ちた赤鬼も、老人の歯抜け鬼にのようになってしまった。
赤い色も色褪せ気味で、体格さえも縮んで見える。

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13. 見えている幹が赤鬼であり、赤鬼の枝と枝の間がすかすかである。
右の方に水路があり、奥に水車が見えている。

28,11,16 1本のモミジの木2-9b.jpg
14. 11月17日。水の中に潜む妖怪も、すっかり勢いを失ってしまった。
さながら禿茶びんの妖怪だ。岸の巨石の上に落ちた落ち葉が今は主役である。
流れの上に落ちた落ち葉は、完全に流され去ってしまった。

27,11,16浮かぶ紅葉5b.jpg
15. 昨年11月16日の水路の状態である。落ちて堆積した葉が水路を埋め尽くし、一部が浮いている。絢爛豪華な赤色の競演。
あの時の君たちは、スターだった。通る人たちすべてが、われを忘れて見入っていた。この1年の差はとてつもなく大きい。

28,11,18 1本のモミジの木1-7b.jpg
17. 11月18日。朝、軽く霜が降りた。中央下方のモミジの葉に白い縁取りが出来ている。季節の移り変わりは矢のように早い。

わずか2週間余りの凄絶なドラマを披露させていただいた。

28,11,25 1本のモミジの木1-2b.jpg
18. これはさらに1週間後の11月25日の画像である。

抜け毛が目立ち、体格も細くなった。
白髪が増えて赤鬼が白鬼に変身してしまった。
いいや、鬼のイメージは完全に消え去った。
それでも、落ちた葉っぱからたくさんの葉緑素を受け取って、
元気に厳寒の季節を乗り越えることだろう。

前日記録的大雪が日本各地に降った。いろは坂では車6台?の玉つき事故で大変だったそうだ。東京方面からのレギュラータイヤ(「ノーマルタイヤ」は和製英語)装着車が原因だとか。彼らにはしっかりとした情報を得て行動してもらいたい。

美しい紅葉が終わった虚脱感が私の中にもある。
よもや、そんな人たちが事故の原因になっていたのではないことを祈りたい。

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それにしてもモミジは、なぜ散る寸前にあれほど感動的に輝けるのだろう。

彼らは、夏の間にせっせと蓄えた葉緑素を、これから厳寒期を迎える母樹にエネルギー源として差し出し、みずからは命を断つ。
その心根の美しさに感動した天地創造の神が、死へのはなむけとして輝く美を授けたもうたのである。




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コメント 4

okko

わが一生を見るようです。それほど輝いた時期はなかったけど、人間みんな、赤鬼さんと同じ運命を辿るということですな。

最後に雪が、有終の美を赤鬼に贈ってくれたことに感謝!
by okko (2016-11-26 16:04) 

joyclimb

4.とてもきれいですね
6.迫力、力強さを感じる紅葉です。
by joyclimb (2016-11-27 00:13) 

観光食堂

またまた、知らなかった光景に感動です。感動の嵐!美しく真っ赤なもみじが水面に映る様は素晴らしいです。私は今年は線路沿いのもみじを撮ったので終わってしまいました。来年は私もこの光景を見に絶対いきます!赤鬼、まさにそんな感じのドラマを見せて頂きました。ありがとうございました。
by 観光食堂 (2016-11-29 13:26) 

nikkin

okkoさん
自分の輝きを第3者的に観察できる人はいないでしょうね。
okkoさんの輝きはokkoさんだけにしか分かりません。
自分で、私は今輝いている、と感じられる瞬間が宝物です。
きっと何度もあったことでしょうね。

joyclimbさん
私を虜にしたモミジです。
長生きして、私を楽しませてほしいです。

観光食堂さん
この感動は、日の出に合わせてその場にいなければ味わえません。
一家の主婦には難しいことかもしれませんね。
ご主人とご一緒にいかがですか。
by nikkin (2016-11-30 14:12) 

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